Question
カウンセラーに相談したほうがいい理由
友人・家族・会社の先輩・上司に相談するのと、カウンセラーに相談するの、どう違うの?
『 結局「お母さんとの関係性が問題です」とか言われて終わるんでしょ 』
『「それは大変ですね」とか言われてもね…、話を聞いてもらうだけなら友だちで十分 』
こんな声をよくききます。
結局、カウンセラーが相談者に対して何をしているのかわからないということの現れでしょう。
そこで、友だちに相談することとカウンセラーに相談することの違いについて解説します。
違いを見ることによって、カウンセラーが何をしてくれるのか?が同時にお分かりになります。
友だちとカウンセラーでは料金を支払うだけのことはあって
大きく2つの違いがあります。
01. 素朴理論か科学的な理論か
02. 枠組みがなく傷つくか枠組みにより守られるか
まずは1点目から詳しく解説しますね。
01.素朴理論か科学的な理論
周囲の人が相談にのると、その人の経験則に基づいた問題点の設定と解決策、そして感情的な反応になります。
相談した相手が自分と同じ考えや感情を持つ経験をこれまでの人生でしてきたならば、気持ちに同調してくれたり、自分の思いつく傾向と同じ範囲での解決策をくれたり、背中を押してくれたりするでしょう。
もしも、相手が自分と全く異なる考えや感情を持っていれば、「その考えはダメだ。こうした方がいい」とアドバイスと言う名の否定と指示命令を受けるでしょう。もちろん感情的には同調も寄り添いもありません。
簡単に言えば、「ああーわかる!それはひどいよ。そんなの別れちゃいなよ」となるか
「わがままだよ。世の中そんなに甘くないよ。まずはもう少し努力したら?」となるわけです。
周囲の人は、個人的な経験と素朴理論(必ずしも科学的に正解とはいえないが、直感的に正しいと感じる理論)に基いてアドバイスをしてきます。
素朴理論や個人的な経験のアドバイスは、認知的な偏りというバイアスによって、様々なエラーを起こしているので、問題を解くことができません。
数学の問題を解くことを想像してみてください。
問題文を読み、何が問われているか?を見つけ、答えを出すためにぴったりの公式を使って答えをだしますね。
目的地までの距離を問われているのか?時間を問われているのか?速さを問われているのか?
何が問われているのか?を把握せずに回答をしたら正解にたどり着くのは偶然となります。
お友だちに相談するというのは、まず第一点目で、とても感覚的で行き当たりばったりの行為なのです。
さて、ではカウンセラーは何が違うのでしょうか?
まず、カウンセラーは個人の経験則で、相談者の問題を見ません。
経験則に基づく素朴理論では認知的なバイアスにより、様々な誤りを侵すことを知っているので、基礎心理学・臨床心理学・認知心理学・社会心理学などに基いて、問題状況や相談者のパーソナリティをしっかりと心理査定します。
心理査定にもとづいて、相談者のパーソナリティ・行動傾向・生活状況など多角的に相談者を理解します。相談者の問題点だけでなく、健康的で豊かな側面も把握します。
その上で、問題について、「何が問われているのか?」を精神医学の診断基準や臨床心理学に基いて見立てを行います。
カウンセリングは心理学の中でもとても新しい分野なので、日々その理論は発展しています。
現在では、生物心理社会モデルといって、問題状況を生物学的要因・心理学的要因・社会学的要因の3要因が絡まり合って発生していると考えています。
これまでは、精神病理に偏って診断するか(生物学的要因)、個人の無意識・防衛機制・心的外傷など心理学的要因に偏って診断するなど、科学的な視点の中での偏りがありました。
これでは、あまりうまくいかないことが多いことが実証的にわかってきたので、今では、問題状況を個人とそれを取りまく社会環境の関係の中で発生するものだとより大きな視点で問題を見立てています。
たとえば、会社の上司がパワハラ気味でうつっぽくなり、会社に行けなくなったとしましょう。
この問題は上司のパワハラをするようなパーソナリティの問題や対人スキルの問題、そんな上司を野放しにする会社の構造的な問題、パワハラに対して対抗できない相談者のパーソナリティや対人スキルの問題、もしかすると上司の精神医学的な問題があるかもしれないし、相談者の精神医学的な問題が隠れているかもしれない。
様々な要因がからみ合って問題が発生しているので、どれか一つを解消してもあまり意味がありません。
この状況の中で、適応していくにはどうするのか?症状がおもすぎる場合には医療の手を借りたり、パワハラがひどすぎる場合には、法的措置や社会的援助資源を探したり、個人の心理の治療と同時に行うことをカウンセラーは治療計画として考えます。
カウンセラーが担当するのは心理学的要因の部分になります。
実際どんな心理療法を行うのか?を決める部分です。
現在は、それぞれの心理療法がどのくらい効果があるのか?という効果研究が盛んになり、効果のあるもの・ないものがはっきりしてきました。効果のない心理療法は淘汰されていく時代です。
アメリカでは、アメリカ心理学会による心理療法のガイドラインにより「研究によって効果が支持された」心理療法の技法リストが発表されいます。イギリスでも政府により2005年に発表されています。
治療効果があやふやな心理療法で、相談者の問題の改善を図ろうとすることは、カウンセラーとしての倫理にも反します。
良いカウンセラーは、研究によって効果が保障された技法を使い、改善計画を立てます。
一つカウンセラーを選ぶときの基準として、何か一つの技法に傾倒しているというのは最新の効果あるカウンセリングとはかけ離れていると思って間違いないでしょう。
全てを無意識のせいにしたり、トラウマとして処理したり、親子関係として処理したり、認知の歪みとして処理するという見立ては、もしかすると友だちに相談するのと同じくらい行き当たりばったりになるのかもしれません。
02.枠組みがなく傷つくか枠組みにより守られるか
あまり相談する人には意識されないことですが、友だちのように「いつでも・どこでも・いつまででも・相手さえよければ」相談できることと、カウンセリングのように「時間・場所・料金」が設定されている中で相談することは、とても大切なポイントで大きな違いがあります。
友だち同士の方が、人間関係もあるし、信頼できるし、安心できる、そして心から話せるのではないか。料金が発生するからカウンセラーは話を聞いてくれるのではないか。お金で心のことを聞いてもらうなんて寂しい・冷たいと考える人は多くいます。
実はカウンセリングのように「時間・場所・料金」を設定して枠組みを作ることで、相談者はとても守られるのです。
カウンセラーは友だちづきあいではありません、契約にもとづく関係です。
私的で個人的な情ではなく、業務として接する以上、「相談者とその問題を解決する共通の目標」に向かってクライアントと治療同盟をくみます。
カウンセラーはその約束を守りますし、相談者自身も約束を守るという意識が芽生えます。
すると相談者には、治療の枠の中で「カウンセリングの時間を自由に使う」ことができます。
枠と治療同盟を結ぶことによって、相談者は自分を傷つける外界とは隔離され、安全で守られた時間と空間を得ることができます。
友人は約束したのにあえなくなったり、親身になってくれていたと思ったら突然友だちを辞められたり、信じていたのに噂を広められたり…、枠がなくお互いに自由である分、トラブルも起きます。
カウンセラーは友だちとは違い、感情的な結びつきではありませんから、予約通りの時間に行けば必ず会えますし、バカにすることはありませんし、望まないアドバイスを押し付けたりもしません、もちろん秘密もバラしたりしません。
カウンセラー・相談者ともに、枠をつくり、治療同盟を守ることで、結果相談者は守られた空間で自由に誰にも話せなかった心情を話すことができ、秘密を守ってもらえます。
自分を自由に表現でき、自己を内省でき、どうすればいいかを見つけることができます。
枠の範囲内において、お互いが責任を持って関わることで、一見制限にも見える枠が、カウンセラーも相談者も守るのです。このように、全く友だちへの相談とカウンセラーへの相談は異なります。